信 州 メ デ ィ ビ ト ネ ッ ト 健 康 七 箇 条
一 . し っ か り 食 べ る
二 . 楽 し く 運動 を 継 続 す る
三 . 自 分 の 体 を 大 切 に す る
四 . 予 防 で き る も の は 予 防 す る
五 . 医 療 関 係 者 の 相 談 相 手 を 持 つ
六 . 明 る く 楽 し く 暮 ら す
七 . 正 し い 知 識 を 持 っ て 、 実 践 、 継 続 す る
『敵を知り己を知れば百戦危うからず』 孫子
健康について考える際には、いろいろな細かな情報をとり入れる前に、
『健康に悪影響をするもの=敵』
『自分=己』
それぞれについて、『確認作業』をしておく必要があるとお伝えをさせていただきました。
前回は、健康についての『敵』について解説をさせていただきました。
今回は引き続きまして、『己』について確認をしていきましょう。
『自分=己』のことなんて分かっているよ
とおっしゃられる方も多いかもしれませんが、ここでは『健康』対策をする上でのご自分について一度確認しておきましょうという意味です。
確認をしておくと、ご自分にあった健康法を取り入れやすくなりますし、間違った健康法を避けることができます。
では、なにを確認するかですが、
① 年齢
② 体型
③ 体質
④ 性別
⑤ 持病の有無
⑥ 目的
です。
またまた、そんなこと分かっているよ~と言う声が聞こえてきますが、いえいえそんなことはありません。
診察室でも、痩せたご年配の女性が、『食べすぎは良くない』と、一生懸命食事制限をしているお話をしばしば聞きます。
コレステロールや糖尿病などの生活習慣病を気にされておられるのでしょうが、やせているにもかかわらず、コレステロールが高いのは、閉経後の『女性』はホルモンの影響でコレステロールが上がりやすいためです。またご家族にもコレステロールが高い方がいらっしゃれば、それは『体質』の影響もあります。
血糖値が高いことも、日本人の中には、すい臓から血糖を下げるホルモンであるインスリンの分泌力が弱いという『体質』の方が大勢いらっしゃいます。また、『年齢』によるすい臓の働きの低下の影響も加わっていることでしょう。
もちろん、血糖値が高めであれば、『過食』や『間食』などは控えたほうが良いことは当然なのですが、食事、栄養の全体量を節制しているまじめな女性をお見掛けすることが良くあります。
そんなやせた方が、食事制限を徹底すると、さらにどんどんやせて体力が低下してしまいます。前回要介護状態になる原因の上位には『体力』に関するものが多く並んでいましたね。
糖尿病を避けようとして、体力の低下が原因で寝たきりになってしまっては本末転倒です。
繰り返しになりますが、きちんと己を知り、正しい知識をもって、自分に合った健康対策を行うことが大切です。
そして、一点だけに集中してはいけません。『健康七箇条』をご理解して、全体をまんべんなく実践していただいた上で、個別の弱い点や気になる箇所への健康療法を取り入れましょうとお伝えをさせていただきました。
『食べ過ぎ注意』は、中年期の太めで、カロリーを摂り過ぎている、いわゆる『生活習慣病』や、『メタボリック症候群』の方に向けられた指導であって、高齢期に入った細めの方に向けての指導ではありません。
そのような『個人差』を踏まえずに、十把一絡げに、コレステロールや糖尿病では、摂取カロリーを落とせばよいということだけではよろしくありません。
医療者の中にも、あまり個別性を考慮せずに、食べすぎ注意とだけ指導しているケースが多くあり、それも問題だと思っています。
そもそも、そういった生活習慣病をお持ちでない方まで、そういった話をよく耳にするもので、がんばって食事制限をされておられる方もたくさんいらっしゃると思います。
むしろ、年齢が上がった女性では、しっかりと食事をすることで、体力や筋力を保って、ロコモティブシンドロームを防ぐことや、骨粗しょう症による骨折を防いで、将来の介護予防や寝たきりを防ぐということが大切になってきます。
そのためには、やせた女性は、食事制限をしすぎずに、むしろ健康七箇条 第一条『しっかりと食べる』ことが大事なことだとご理解をいただけることでしょう。
その際に、少しだけ栄養素の知識があると、ご自分の年齢や、体質を考慮しつつ、積極的にとったり、とりすぎを注意して控えたり、食材を選択することができるようになります。
栄養素の話に入る前に、『個別性』についてもう少し詳しく解説をさせていただきます。
① 年齢
まず『40歳代~65歳くらいまでの壮年期、中年期』と『65歳以上の高齢期』では、健康に対する目的が異なっていることをしっかりと区別しておきましょう。
40歳代~65歳くらいまでの壮年期、中年期
20歳~30歳代に比べて、基礎代謝や活動量が落ちてきますので、それまでと同じような食事を続けていると多くの方は、体重が増加してしまいます。
これが生活習慣病の始まりです。
高血圧、糖尿病、高脂血症、高尿酸血症などは、だいたいこの年代から増加していきます。
ですので、この年代の方の健康対策は、『生活習慣病対策』としての、肥満予防を中心とした食事療法が中心になります。
何かの健康食品を『摂る』ことで健康を得るというよりも、カロリー摂取を『控える』ことが、健康につながる時期と言えます。
『もう若くはない』と、『認めて』、『受け入れ』、カロリー量を控えようと『自覚=己を知る』をすることが、健康療法の対策の入り口と言えます。
65歳以上の高齢期
もちろん個人差がありますので、きっちりと『65』という数字で割り切れるわけではないのですが、高齢者の定義となっている65歳という数字を挙げさせていただきました。
『第3回 健康七箇条…の前の確認作業 前半』のコラム内でもお伝えをさせていただきましたが、要介護になる原因として多い③位、④位、⑤位はすべて『体』や『体力』に関連しています。
図1 介護が必要となったおもな原因 厚生労働省 平成28年国民生活基礎調査
そうです。
高齢期に入ると、『病気』にならないように気をつけつつも、一方で、『老化による体力の低下』にも気を配って対策を行わないと片手落ちということになります。
『体力』ですので、一番の対策は第二条『楽 し く 運動 を 継 続 す る』ことであり、また体力、筋力を維持するためには『食事』も大切です。
中年期の生活習慣病対策では『カロリーオーバーに注意』をするようにと先ほど述べさせていただきましたが、高齢期に入ると体力を維持するために第一条『しっかりと食べる』ことが大切になってきます。
以上、ご自身の『年齢』と、年齢に伴って、健康に対する目標が異なってくることについて解説をさせていただきました。
一点、ご注意をいただきたいことは、『④持病の有無』にも関連しますが、ここでは『ご病気のない方』のための総論についてご説明をさせていただいています。
たとえば、70歳の高齢期に当たる方でも、肥満があって、糖尿病がある方は、『個別』に『病気』に対する『食事、運動療法』が必要になります。
②体型
さきほど、やせ型の女性のたとえを出させていただきました。
体型の違いは、皆さんご自覚があると思いますが、一緒に確認をしてみましょう。
BMI(Body Mass Index)・体格指数
まず、体型の話ので必ず出てくるBMIについてご説明をさせていただきます。
健康診断などでも結果に記載されていますので、聞いたことがある方も多いと思います。
体重と身長から計算する、肥満や痩せ具合を見るための国際的な指標です。
BMI = 体重 (kg) ÷ 身長 (m) ÷ 身長 (m)
で計算されます。
(参考)カシオ計算機株式会社(CASIO)ke!san 生活や実務に役立つ計算サイト
健康の計算「BMIと適正体重」
http://keisan.casio.jp/exec/system/1161228732
低体重、やせ |
18.5未満 |
普通体重 |
18.5~25 |
肥満症 |
25~35 |
高度肥満症 |
35以上 |
標準体重
逆に、BMIが22前後になる体重の方が生活習慣病になりにくいという研究結果から『標準体重』や『適正体重』とも呼ばれます。
標準体重(kg)=身長 (m) ×身長 (m) × 22
以上の計算から、現在のご自分のBMIと標準体重を確認をしてみましょう。
しかし、BMIは『個別性』を一切考慮しておりませんが、やはり人それぞれ個人差があります。
『②体型』の『個人差』は、『骨格(骨太、骨細)』で確認をすると良いと私は考えています。
・骨格
『骨格』の個人差の違いをいわゆる『骨太、骨細』で分けて確認します。
あまり、医学的でなくお恥ずかしい言葉使いで恐縮なのですが、健康面を考える上で一度確認をしておくとご自分の体のことをよく理解できます。
これは、単に背が高い低い、体重が重い軽いということではありません。
『骨=体の基盤』がしっかりとしているかどうかというわけ方になります。
骨太、骨細の見分け方には、きちんとした医学的に明確な分類基準があるわけではないのですが、私は、胸板が厚い、骨盤周りがしっかりしている、足首が太いなどを参考にしています。
単純に骨ががっしりしているという印象でも良いかもしれませんが、大切なことはあくまで『骨格』なので、『筋肉』や『脂肪』による体型を取り除いて判断をする必要があります。
私は、医師ですのでレントゲン写真を見よく見るため、骨がしっかりしている方や、ほっそりした骨だな~などと『骨』とご本人を見比べるのでよく分かります(笑)
骨太で骨格のしっかりした方は、からだの土台がしっかりしているため筋肉や脂肪が付きやすく、太りやすく、高血圧などの生活習慣病を起こしやすくなります。
ですので、体重管理に注意が必要です。
しかし、決して標準体重のBMI 22を目指す必要はないと思っています。
生活習慣病の有無にもよりますが、BMIは25を超えない程度の目標でよい方も多い印象です。
逆に骨格が細い方が、標準体重のBMI 25を超えていると本当の肥満と言えます。時にはBMI 22を超えた程度でも、生活習慣病が見られることがあります。
BMI 18.5を下回っている方は、先ほどからお伝えをしている高齢期になった際の『体力』にかかわる問題が出やすくなってきます。『骨粗しょう症』による骨折などの問題も起こりやすいため、BMIは18.5を下回らないように積極的に第一条『しっかりと食べ』ましょう。
『BMI 25くらいのちょっと太っているくらいがよい』というお話を聞いたことがある方もいらっしゃると思います。BMI 25は、骨太の方にとっては適正体重に近いため、生活習慣病などの持病がなければ、もともと骨太の方は体力があり骨も強いたため寝たきりになりにくいと言うお話です。
けっして、骨細の方が無理に太ってBMI 25を目指しなさいと言うことではありませんのでご注意ください。
以上、ここでは、『骨格(骨の太さ)』によって、『個人差』があることについてご説明をさせていただきました。
『骨太』、『骨細』でふたつに分けたわけですが、もちろん、中間の太さの方々が一番多いので、どちらか悩まれた方は、BMI 22を標準と考えていただいてよいでしょう。
また、BMIには『年齢』によっての区分があることもご存知でしょうか?
年齢(歳) |
目標とするBMI |
18~49 |
18.5~24.9 |
50~69 |
20.0~24.9 |
70以上 |
21.5~24.9 |
この資料は、「日本人の食事摂取基準(2015 年版)策定検討会報告書について」より引用していますが、そこの注意書きには
「70 歳以上では、総死亡率が最も低かった BMI と実態との乖離が見られるため、虚弱の予防及び生活習慣病の予防の両者に配慮する必要があることも踏まえ、当面目標とする BMI の範囲を 21.5~24.9 とした」
と記載されています。
分かりやすく言い換えますと、このコラムの前半や前回ご説明をいたしましたように、年齢が上がってくると、『体力』が大切になってきますので、やせすぎないように注意をしましょうと読み取れます。
それには『第一条 食事』、『第二条 運動』がおおきくかかわってくることは、もうみなさまご理解いただけたことと思います。
今回は『己』を知るために、『年齢』と『体型』の『個人差』、『個別性』についてのをご説明させていただきました。
世の中にあふれる健康情報は、一般論だったり、はたまた特定の方向けの極論だったりします。
まず、ここで『己』をきちんと確認して、『自分』を知っておきましょう。
そのうえで、雑誌やテレビの健康情報を見たさいには、『さて、この健康情報は自分に合っているのか?』と言う視点を今後はぜひ持ってください。
今回のまとめ
健康対策を実践する前に、まず『自分=己』を確認する。
① 年齢
② 体型
③ 体質
④ 性別
⑤ 持病の有無
⑥ 目的
① 年齢
中壮年期は、カロリー摂取を控えて、生活習慣病に注意する
高齢期は、積極的に食事、運動をして、体力維持に努める
② 体型
BMIは18.5~25が標準
標準体重ははBMI22
しかし、骨の太い人、細い人で、それぞれの適正体重が異なる
年齢が上がるとBMIが落ちない用に気をつけて、体力維持に努める
次回は、今回に引き続いて『己』を知るための後半について解説をさせていただきます。
『信 州 メ デ ィ ビ ト ネ ッ ト 健 康 七 箇 条』
一 . し っ か り 食 べ る
二 . 楽 し く 運動 を 継 続 す る
三 . 自 分 の 体 を 大 切 に す る
四 . 予 防 で き る も の は 予 防 す る
五 . 医 療 関 係 者 の 相 談 相 手 を 持 つ
六 . 明 る く 楽 し く 暮 ら す
七 . 正 し い 知 識 を 持 っ て 、 実 践 、 継 続 す る
健康七箇条…の前の確認作業 中編 (今回)
健康ってなんだろう? 信州メディビトネット健康七箇条 第一条①
健康ってなんだろう? 信州メディビトネット健康七箇条 第一条②
健康ってなんだろう? 信州メディビトネット健康七箇条 第一条③
健康ってなんだろう? 信州メディビトネット健康七箇条 第一条④
健康ってなんだろう? 信州メディビトネット健康七箇条 第一条⑤-1
健康ってなんだろう? 信州メディビトネット健康七箇条 第一条⑤-2